東京成徳短期大学 TOKYO SEITOKU COLLEGE Mind・Children・Communication
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2008/11/10
【第66回】マニエル監督とコミュニケーション


2008年の米国ワールドシリーズで、「タンパベイ・レイズ」を4勝1敗で下し「フィリーズ」に優勝をもたらしたのは、チャーリー・マニエル監督。彼は、1963年にミネソタ・ツインズに入団、1970年以後は、主にマイナーでプレー、チャンスに恵まれなかった典型的な「4A選手」だった。

1976年、ヤクルトに移籍。1年目は、日本の野球になじめず、失意の日々が続き、大酒を飲んで荒れ狂った。しかし、「2年目以降、日本のスタイル、習慣に適応できるようになって来た。傲慢だった私が人の話が聞けるようになったんだ」。
言葉が満足に通じないために、コミュニケーションをとって互いを理解することの大切さを知った。心を開き、同僚らと心を通わすようになって成績も急上昇。「内角速球の打ち方を日本で覚えた」と技術面も向上、78年は39本塁打でヤクルト初の日本一に貢献。
しかし、守備・走塁を重視する広岡監督の管理野球が受け入れられず、自ら近鉄へ。79年、80年と近鉄へパリーグ優勝をもたらし、80年のオフには、契約交渉の決裂から近鉄を退団、古巣のヤクルトに戻るもスランプで引退。彼は、弱小チームの「優勝請負人」として大活躍した日本人なじみの選手だった。

 


マニエルの少年時代からの夢は、大リーグの監督になること。1981年にアメリカに戻り、ツインズのスカウト、マイナーリーグでコーチ、監督も経験。
2000年、大リーグ、インディアンスの監督に。2年半に及ぶ監督時代は、病気に悩まされたりして満足のゆく結果は残せなかったものの、2003年にはフィリーズのゼネラルマネージャー(GM)特別補佐。2005年、ついにマニエルは、監督に就任。

監督3年目の昨2007年は、3勝9敗でスタート、4月17日のナイターでは大敗。ラジオのDJが、選手の無気力プレーを糾弾するやマニエルは「後でオフィスに来い。私がどんな人間かそこで教えてやる」と、米国でのニックネーム「レッドデビル」そのままに、真っ赤になって反撃。口汚いののしりあいは、低迷チームの恥の上塗りと冷ややかな目で見られ、解雇は時間の問題と見られた。が、その後のチームは、ラスト2週間あまりでは7ゲーム差を大逆転、14年ぶりに地区優勝。
巨体、赤みを帯びた金髪をなびかせ、普段は陽気だが、喧嘩っ早い性格のマニエル監督の日本における愛称も、恐ろしい「赤鬼」。乱闘をした相手を試合後、駅まで追いかけ回したとか、飲み屋で喧嘩に巻き込まれ、コンクリートを振り回して暴れたとか、数々のエピソードの持ち主。
ヤクルトでは、対等な横の関係にあり、個性をアピールしあう選手とのコミュニケーションは取れるようになった。が、個性の強い選手を統率し優勝を目指す監督と選手という上下関係にある広岡監督の思いは理解し得なかった。しかし、監督になると見えてきたのが、この上下関係の難しさと重要性。

 


「ヒロオカは、とても聡明な野球人だったが、私とは合わなかった」と振り返る。さらに続け、「監督はあえて私を怒らせようとした。その背後にある意図を当時、私は理解できなかった。指揮官にはアメとムチが必要。最高のチームをフィールドに送り出すため、彼のしたことは正しかったのだろう。現在の私の監督スタイルの多くは、そんな日本での経験に裏打ちされている」
試合前、一人ひとりのロッカーに駆け寄って、言葉を交わす。根拠のない批判からは、選手たちをかばい続ける。周囲に何を言われようと、最も大事なのは、選手たち。
「基本的に楽しくプレーすれば、良い結果が出る。そしてその根本にあるのは、打撃。チームのエネルギー、試合の流れは、打撃によって生み出される。それこそがチームを優勝に導くものなんだ」。
マニエル監督が、選手とのコミュニケーションに努めた成果こそ、28年ぶりのワールドリーグ優勝であった。

ここで、我々が学び取るべき教訓は、3つ。
1.チームメンバーとのコミュニケーションの大切さ。
2.コミュニケーションには、ポジションが変わらないと見えない、体得できないものがあること。
3.若いときの夢は、抱き続け、追い続けるべきこと


<参考文献>
杉浦大介「駆ける魂 チャーリー・マニエル」日本経済新聞夕刊 平成20年9月8~10日
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■■■PROFILE■■■
松井陽通(まつい きよみち)
ビジネス心理科教授。商学修士。
担当科目/消費者の心理、広告コミュニケーション論、情報メディア論など。
専門分野/広告論、消費者行動論、広報論。
(株)博報堂、茨城大学人文学部を経て本学に。

 
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