東京成徳短期大学 TOKYO SEITOKU COLLEGE Mind・Children・Communication
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2008/10/20
【第63回】酸っぱいブドウと甘いレモン


梨・ブドウ・柿・栗・りんご・・静謐で清澄な空気の中で、見上げると高く突き抜けるような青々とした秋空が広がり、果物が美味い季節になった。そこで今日は果物の話。

心理学でいう防衛機制を表す「合理化」という考え方を説明するのに、イソップ童話の寓話が使われることが多い。脚色を加え要約するとこんな話である。
田舎道を歩いていた一匹のキツネが、木の上に美味しそうなブドウの房を見つけ採ろうとするが、どうしても採れない。諦めて帰るとき、こうつぶやく。「あのブドウ、甘そうに見えるけど本当はすっごく酸っぱいに違いない。きっとそうだ。あぁ、あんな酸っぱいブドウを食べずにすんで良かったなぁ。」(英語では負け惜しみのことをSour Grapesという。)
ブドウが採れずとぼとぼと帰る途中、今度はキツネは道端に落ちていた1個のレモンを拾う。そして、こうつぶやく。「レモンにしては何だか甘そうだ。」レモンにかじりついて、ちょっと酸っぱそうな顔をしながらも「やっぱり結構甘いな。もしかして、さっきのブドウよりこっちの方が甘いんじゃないかな。僕ってやっぱりラッキーだなぁ。」
・・・このように、どうしても得られないもしくは得るのが非常に困難なものを、「余りたいしたものではない」と思い込んだり、「実は理想的ではない」自分の持っているものを「案外良いもの」と思い込むことによって、理想的な状況に無いという事実に由来するストレスから自分自身の心を守る仕組み・心の働きが、防衛機制「合理化」の心理状態である。

高校生や大学生に限らないが、進学や就職で一二度失敗すると立ち直れず、物凄い心理的打撃を受けることがある。少し自分が不利になると、もうどうしていいか分からなくなることもある。目の前の困難を乗り越える気迫を忘れてしまうことも多い。人は、迎合しなければ生きていけないほど厳しく不快な中にいると無気力になるし、そうかといって困難さの無い甘やかされた中にいても無気力になる生物だ。ただ、これだけは言える。

「ごまかして生きることが、どれほど心理的に害になるか。」

酸っぱいブドウや甘いレモンはその人をその場で表面的には救うかもしれないが、長い目で見れば、その人自身を絶望的にしていく。「私達は、成功ばかりで幸せになれるのではなく、失敗と戦うことで幸せになれるのだ。」ということを知っておこう。

今日は、最後に米国の社会福祉事業家・ヘレンケラー(DVDで“奇跡の人”を見てほしい)の言葉を紹介しよう。
「幸福の扉の一つが閉じる時は、別の一つが開きます。けれど私たちは閉じたほうばかりながめていて、こちらに向かって開かれているもう一つの方に気付かないことが多いのです。」

 


■■■PROFILE■■■
野口禎一郎(のぐち ていいちろう)
ビジネス心理科教授。商学修士。
担当科目/経営学入門、現代企業概論、インターンシップ、キャリア開発、流行論、アパレル商品論、販売の心理、など。
専門分野/流通戦略論
(株)伊勢丹、ジャスコ(株)を経て(株)ブルーグラス代表取締役社長、イオン(株)執行役を歴任後、本学に。

 
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