| 2008/10/07 |
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【第61回】イノベーションのタイプ
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今回は、前回(第54回)の最後で少し触れたイノベーション(技術革新)についての話です。
最近、「日本の再生に向けて、今こそイノベーションが必要」などという論調を新聞やテレビで頻繁に目にするかと思います。しかし、ひとくちにイノベーションといっても幾つかの視点があり、視点に応じて複数のタイプに分かれます。イノベーションを製品開発過程の視点から見ると、製品イノベーション(=プロダクト・イノベーション)と製造工程イノベーション(プロセス・イノベーション)に分かれます。
製品イノベーションとは、製品自体の機能を高めるイノベーションのことです。身近な例を挙げると、デジカメの画質を高精細化する、携帯電話を高機能にする、ハードディスクをコンパクトにして大容量化するなどです。
ところで、新製品の実現に向けて製品技術的な壁を乗り越えたとしても、研究所や工場内で試作品が幾つかできただけでは、市場には出せません。まず品質にムラがあり過ぎます。また大量生産する技術もありません。そのため、製造するのにコストがかかりすぎてしまうからです。
良品を消費者へ安価に供給するには、高品質で大量に生産する技術が必要となります。これが製造工程イノベーションです。「品質は工程で作り込め。」という言葉もあります。試作から量産試作、本格生産へと進むには、創意工夫を凝らした製造方法の確立が必須となります。
このように2つのイノベーションは、いわば車の両輪に当たります。
実際には、製品イノベーションも製造工程イノベーションも、開発過程のある一時期にだけ生じるのではありません。研究者、技術者の不断の努力により、長期にわたり持続的に発生してくるのです。
ただし、1つの製品分野で見ると、製品イノベーションのピークが先にあり、その後に製造工程イノベーションのピークが訪れます。これは、多様な産業で長期にわたる広範な観察から得られた経験的事実です。
製造工程イノベーションは、日本のモノ造り産業の得意とするところです。トヨタの開発した「かんばん方式」はジャストインタイム(JIT)方式へと発展し、製造業の他業種やサービス産業にまで広く普及しており、これにより我々は日々の生活で大変な恩恵を受けています。また、製品イノベーションに必要な要素技術についても、これまでに相当の蓄積があります。
では、冒頭の論調の中で求められているイノベーションとは何でしょうか。
日本に今必要なのは、単なる製品イノベーションではなく、ラディカルな製品イノベーションなのです。さらにラディカルなイノベーションを継続的に生み出し、それらを活用することができる社会的システムの構築も必要となります。これを個別企業の努力だけで実現することは難しく、人的資産、知的資産、制度設計も含めた総合力が問われているのです。
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■■■PROFILE■■■
宮澤俊憲(みやざわ としのり)
ビジネス心理科准教授。博士(工学)。
担当科目/ビジネス・コンピューティング、コンピュータ・ネットワーク演習、統計処理演習など。
専門分野/統計データ解析、モデル同定法、技術経営論。
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