観光に関して、学生が選んだ「日本遺産」については、以前紹介した。学生の視点が実に楽しく、こうやって自分たちの文化を見てみるのはいいことだと思っている。日本の良さをもう一度考え直して、観光を学ぶ際のもう一方の価値観にしてほしいといつも思う。日本の良さを自分なりに検討し、それを基に旅行や「まちおこし」などを考えてほしいからである。
十条には、富士山がある。そして地元の人たちから愛されている。地元で「お富士さん」と呼ばれ、親しまれているている富士神社のことである。実は、ここは「トラベルライター入門」の授業で学生とともに毎年訪れている場所でもある。以前に『十条の街を歩いて~授業紹介トラベルライター入門』という記事を載せた時にも、その中の学生が「埋まる富士山」、「今も残る戦の後と小さな富士山」、という題でこの「お富士さん」を書いてくれた。その「お富士さん」、富士神社について今回は書いてみたい。十条キャンパスから、7分ほど北に行った住宅街の中に富士神社はある。写真撮影時の夏休みは、訪れる人も少なく、蝉時雨の中、ひっそりとしていた。 東京には、富士山信仰が盛んだった江戸時代に、富士山に登れなかった人のために富士山の溶岩を持ち帰り、少しずつ積み上げて作った富士山が30ほど残っており、東京都の北区ではこの十条の他に、田端にもある。しかし、十条の富士山は意外に高い。どうやら、中世期の塚を利用して、その上に溶岩を積んだものである、という。 この富士神社を見て、何を思うのだろうか。意外な小ささに驚く人、江戸時代の富士信仰の流行に興味を持つ人、またこの場所が江戸時代どのような場所だったのかという興味を持つ人、他の富士山を探してみたいと思う人など、いろいろなことが考えられそうである。実は、その何かを感じて、さらに想像する力が大切なのである。 この富士神社のお祭りは、富士山の山開きに合わせて、毎年6月30日と7月1日に行われているよ、と話したところ、受講者の多くがその祭りを実際に見に行って、その人の多さに驚いていた。この好奇心が大切なのである。実際に屋台の並ぶ祭りの人混みの中を歩きながら、今でもこれだけの人が集まるお富士さんに、改めて興味を持った学生もいたようだ。 学ぶことは、当然大切である。そして、学んだことを基に、さらに自分なりの興味をもって行動してみる、調査してみる、これが実に大切でもあるし、実力を向上させるものでもある。さらには、他の富士山の祭について考えてみるとか、見に行ってみるとか、こういった場所を維持するためにするべきこととか、もっと広く知ってもらう工夫はないだろうか、などと、いろいろ考えてみることが、観光の力をつける一歩でもある。 ふじた ようじ(観光・日本文化担当 教授)
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